「療育」という言葉は保育士や医療職をはじめとする専門職以外の方もよく耳にするようになっているのではないでしょうか?一方で、療育という言葉の定義や考え方が曖昧なまま使っている方も少なくないと思います。この記事では「療育」の歴史から、療育とは何か?をわかりやすく解説していきます。
療育とは?
療育の歴史
そもそも、「療育」という言葉は、どのように使われるようになったのでしょうか?
初めて「療育」という言葉を使ったのは昭和17年に高木憲次氏が「不自由な肢体」に対する働きかけを意味する言葉として使われたとされています。
その後、明治時代中期に、ヨーロッパで台頭した「治療教育」の思想が日本にも伝えられ、主として知的障害児を対象とする教育的な働きかけも含まれて、今日に至るまで受け継がれてきたと言われています。
治療教育という言葉が使われるようになってから、障害そのものを克服しようとする「治療的」意味合いと、発達的視点に立って可能性に挑戦した「教育的」意味合いから、知的障害に関わる関係者の間で「治療教育もしくは療育」と呼ばれるようになっています。
参考書籍: 重症心身障害療育マニュアル,
療育の概念
歴史から見える通り、「療育」という言葉はもともと医療的な側面から定義された言葉でありながら、教育的な側面も加わり、別々の領域で使われるようになったことから今日までも非常に曖昧に使われている現状と言えるでしょう。
混乱を起こしやすい表現として、療育手帳や療育指導、療育等支援事業などがあるため、「療育」という言葉を曖昧にさせているように思われます。
そのため、重要なポイントとして、療育は「狭義の意味の療育」と「総合的な支援サービスという意味の広義の療育」で使い分ける必要がありそうです。
高松鶴吉氏は療育について以下のように述べています。
療育とは, 現在のあらゆる科学と文明を駆使して障害児の自由度を拡大しようとするもので, その努力は優れた『子育て』でなければならない
参考書籍: 重症心身障害療育マニュアル第2版
療育とは? 〜まとめ〜
歴史や概念を辿り、「療育」について要点をまとめると、
- 療育は元々医療的な領域で使われ治療的概念が強かったが、経過の中で教育的な視点と統合され、「治療教育もしくは療育」と表現されるようになった。
- 療育には「狭義の意味での療育」と「総合的支援サービスという意味合いの広義の療育」がある。
- 現在の療育の中では、優れた「子育て」であるとして定義がされつつある。
療育の定義や目的、役割は?

療育の定義
療育の定義を知る上で、厚労省の「児童発達支援ガイドライン」を確認する必要があります。
こちらのガイドラインでは以下のように定義されています。
児童発達支援は、障がいのある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障がいの特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。
参考: 厚生労働省「児童発達支援ガイドライン」
ガイドラインの定義の通り、療育は障がいのある子どもに対して、その特性に応じた支援をすることと言えます。
歴史的背景も含めて考えると、子育ての領域を超えて、その子どもの特性に合わせた支援が行われることが非常に重要に思われます。
療育の目的
療育の目的は、障がいのある子どもの身体的、精神的な発達を促しながら、日常生活や社会生活を円滑に過ごせるようにすることになります。
子ども達が将来的に社会において自立した生活が送れるように、個人の障がいの程度や特性に合わせて支援を行っていきます。
児童福祉法においては、
「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000096698.pdf
とされています。
その為、子どもの意思を尊重し、本人の最善の利益を考慮しながら支援する必要があります。
療育の役割
一言に療育といっても、その役割は多様になります。
当然ながら、子ども達1人1人の発達や自立支援を促していきますが、家族支援や地域支援も重視する必要があります。
子どもを育てているのは家族であり、障がいの特性や段階に応じて育ちや生活を安定させることを基本にした支援を行うことで、子ども達にも良い影響を与えることが想定されます。
その為、家族に対するペアレントトレーニングなども合わせて行うことで、子ども達の障がいの程度や段階に応じた対応を理解することで、子どもや保護者にとって適切な子育てができるように支援を行います。
一方で、家族支援だけではなく家族が生活を置く「地域支援」にも力を入れることが大切になります。
地域支援においては、通所している園や学校、施設など、子どもが関わっている他施設との連携を図ることや定期的な情報共有を行うことで、本人に合った支援を受けられるようにすることも役割の1つになります。
ご家族にとっては、1人(両親)で子育てをするわけではなく、支援する体制があって心身ともに支え合える環境作りが大事かと思われます。
療育におけるポイント、内容、施設について

療育のポイント
療育による支援方法は、子どもの障害や特性に応じて異なります。その中でも「児童発達支援ガイドライン」では、以下のポイントに留意して支援することが重要とされています。
参考: 厚生労働省「児童発達支援ガイドライン」
- 一人一人のアセスメントを適切に行い、子どもと保護者のニーズや課題を客観的に分析した上で支援に当たるとともに、子どもが安心感と信頼感を持って活動できるよう、子どもの主体としての思いや願いを受け止めること。
- 子どもの生活リズムを大切にして、健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境や、自己を十分に発揮できる環境を整えること。
- 1人ひとりの子どもの発達や特性を理解して、発達の過程に応じて個別または集団における活動を通して支援を行うこと。その際、子どもの個人差に十分配慮すること。
- 子どもの相互の関係作りや互いに尊重する心を大切にし、集団における活動を効果あるものにするよう援助すること。
- 子どもが自発的、意欲的に関われるような環境を構成し、子どもの主体的な活動や相互の関わりを大切にすること。特に、乳幼児期にふさわしい体験が得られるように支援を行うこと。
- 子どもの成長は、「遊び」を通して促されることから、周囲の関わりを深めたり、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにできるように、具体的な支援を行うこと。
- 「育つ上での自身や意欲」、「発話だけに限定されないコミュニケーション能力の向上」、「自己選択、自己決定」等も踏まえながら、子どものできること、得意なことに着目し、それを伸ばす支援を行うこと。
- 一人一人の保護者の状況やその意向を理解し、受容し、それぞれの親子関係や家庭生活等に配慮しながら、様々な機会をとらえ、適切に援助すること。
療育の内容

先述したように、療育の内容は大きく分けて、「発達支援」、「家族支援」、「地域支援」の3つになります。

発達支援においては実際にどのような支援を行うか、療育への考え方によって異なります。例えば、「応用行動分析学」や「認知行動療法」、「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」、「TEACCH」などの他に、食事療法や運動療法、音楽療法などといった様々な手法が取り入れられています。
療育の施設
療育の施設は以下の通りとなっています。

代表的なものとして、通所型と入所型に分かれます。
上記以外に、訪問型の「居宅訪問型児童発達支援」もあります。これは、重度の障がいなどにより外出が困難な子どもが利用できる療育になります。
療育施設は、児童相談所や保健センター、医師などから療育が必要と認められることで利用が可能になります。
施設の形態によりますが、施設内には医師や保育士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、専門的なスタッフが配置されています。
まとめ

今回の記事では、
・療育の歴史や背景について
・療育の定義や目的
・療育のポイントや内容、施設
等についてまとめていきました。
療育では、障がいのある子どもやその傾向が見られる子どもが社会的に自立して生活ができるよう、個人に合わせた支援のもとで様々な能力を身につけられる可能性があります。
本記事が少しでも参考になれば幸いです。


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